塩化カリウムのザッピング

暇人がお送りする暇人のための雑記?ブログ

好きな和歌

 おはようございます。皆様は百人一首はお好きですか?特に好きでなくとも何度か百人一首で遊んだことはあると思います。好きな歌が一つでもあれば楽しくなると思いますよ。

そんなわけで今回は私の好きな歌について紹介させていただきたいと思います。

 

瀧の音は たえて久しく なりぬれど

名こそ流れて なほ聞こえけれ

 

意味

滝の音は水が涸れて絶えて久しくなったけれども、高い評判は流れ伝わって今でもやはり聞こえてくることだ。

 

作者

大納言(藤原)公任

(だいなごん(ふじわらの) きんとう)

和歌、漢学、管弦に秀でていたことで有名。

 

  音が好きなのでこの歌を気に入っています。もちろん名歌とされるものはみな音がきれいなのですけれど、この歌は特に私の感性とマッチしているんですよね。後述しますが、「た」と「な」を多様している歌で、さ行た行な行の音が好きな私には刺さります。皆様はそういうのはありませんか?どの音が好きとか。あんまりないですか……そうですか……

 

この歌のイメージは、冒頭でパッと滝がでてきて、次に、あれっ、滝涸れちゃったんだ、となるんですが、でも評判はすごいからまだ滝があたかも流れてるような感じで。

滝が無いんだけどあたかも存在してるような、存在と非存在が入り交じっているような、そんな感じがしてとても好きです。

 

 この歌の技巧

 一・二句の頭には「た」、三句以降は「な」の音が配置してあります。

「た」きのおとは 「た」えて久しく 「な」りぬれど

「な」こそ「な」がれて 「な」ほ聞こえけれ

「滝」と「流れ」は縁語。「音」「鳴り」「聞こえ」も縁語です。「なりぬれど」の「なり」は「成り」と「鳴り」を、「名こそ」は「名」と「名古曽(の滝)」をかけています。

 

 名古曽の滝

 この歌でいう滝は「名古曽(なこそ)の滝」という滝で、今では「名古曽滝跡」として残っています。
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この歌が詠まれたのは大覚寺というお寺の前身で、その近くに名古曽の滝がありました。

 

 藤原公任についてもう少し詳しく


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 公任は和歌、漢学、管弦に秀でていたことは先述の通りですが、そのことを物語る有名な話があります。

ある年、藤原道長が大井川で船遊びを行ったとき、「漢詩の船」「音楽の船」「和歌の船」に分け、それぞれの道に堪能な人を乗せた。道長は公任に、どの船に乗るつもりなのかを聞いた。

(ここで公任が、三つの道にとても堪能であるということが認められていたことが分かります。)

公任は和歌の船を選び、素晴らしい歌を詠んだのだが、後になって言うことには「漢詩の船に乗っておけばよかった」と。漢詩の歌に乗っていればもっと名声が上がっていたのに、ということだそうで。

この話の最後で語り手は、公任ほどどの道にも精通していた人物はいない、と述べています。公任がいかに優れていたか伝わったと思います。この話は「大鏡」に収録されており、「三船の才」と称せられて有名な話です。是非実際に読んでいただきたいです。

 

 

 皆様も好きな歌を見つけ、色々調べてみると面白いと思います。和歌の味わい深さを感じ、そして百人一首に臨むとより楽しめるのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。